紅葉が美しい季節です。私は名古屋駅に程近い桜通のイチョウの並木道が大好きです。交差点の歩道橋からのぞき込むと、黄金色に包まれた名駅の晩秋の風景に心を奪われます。

なぜ私たちは紅葉に魅了されるのでしょうか。広葉樹は春に芽吹き、夏に成長。実りの秋を迎えます。そして冬を前に鮮やかな衣をまとい、静かに眠りにつきます。まるで光が消え去る瞬間の「生命の輝き」のようです。

先般、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが亡くなりました。当初、奔放な性を描いた作風が好きになれませんでした。しかし出家後の作品の言葉の数々に我が身を振り返り、時に胸を打たれました。数えきれない魂を救った晩年の寂聴さんの笑顔は、まばゆいばかりの生命の輝きを放っていました。その輝きは赤だけではなく黄や茶など多彩な色が混じり合った、紅葉のような深みを感じる美しさです。

紅葉の美しさは、いまこの瞬間を懸命に生き抜いてきた、生の証しなのかもしれません。